網状群体形成時に遊走子の接着部に局在する細胞接着分子について、遊走子の破砕液を抗原として作製されたモノクローナル抗体を用い、解析を行った。イムノブロット解析では検出された分子の多くは群体形成時の細胞接着前後に発現した。細胞接着分子は遊走子が動きだすと細胞表面に均一に観察されたが、この分子が局在する部分が1箇所存在した。遊走子が多面体になると、他の遊走子と接触している角ばった部分が強く染色された。この時期には1束の微小管が鞭毛基部から細胞後方へ伸び、細胞が角張った部分より太くなる。この分子はこの微小管の束が太くなりはじめた領域に局在した。遊走子の動きが止まった直後では、3細胞が集まった接着部分付近が局所的に染色された。網状群体形成20分後には太い微小管の束が細胞接着面付近を通り、この分子は細胞接着面の微小管の束付近に局在し、1細胞につき2箇所が強く染色された。コルヒチン処理した遊走子ではこの分子は表面全体に一様に分布し局在しなかった。形成直後の群体では細胞は不規則に接着し、細胞接着分子は細胞内には取り込まれた鞭毛に由来する微小管の束付近に分布した。免疫電子顕微鏡観察では、金粒子はゴルジ体、小胞、原形質膜上に検出された。また多面体の遊走子の接触部分や群体形成直後の細胞接着部に検出された。マウス腹水よりIgGを精製し、母細胞から取り出した遊走子を含む培養液に添加した。コントロールでは約9割が正常な網状群体を形成し、IgG存在下では約7割が細胞接着様式が異常な群体となった。これらの結果から遊走子の原形質膜下の微小管の束の配列様式により、この細胞接着分子の細胞表面における分布が制御され、この分子が局在して細胞の接着位置を決定し、六角形の網目状のパターン形成に大きな役割を果たしていることが示唆された。
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