研究概要 |
成体雄ラットの球海綿体筋に分布する神経を切断すると、球海綿体脊髄核(SNB)の運動ニューロンに対するアンドロゲンの効果は認められない。このことから、SNB運動ニューロンに対するのアンドロゲンの作用には球海綿体筋由来神経栄養因子が重要な役割を果たしていると考えられるが、現在のところその作用機構は不明である。運動ニューロンの発達とか維持に脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロピン-3(NT-3)、毛様体栄養因子(CNTF)、インスリン様成長因子-I(IGF-I)などが関与するといわれている。球海綿体筋はアンドロゲン受容体を含有し、アンドロゲンによって産生された球海綿体筋由来神経栄養因子が逆行性にSNB運動ニューロンに輸送されて生理作用していると考えられる。そこで、球海綿体筋における神経栄養因子の発現機構を分子生物学的に解明することを目的とした。即ち、(1)BDNF, NT-3、CNTF、IGF-Iを球海綿体筋由来因子の候補と考え、それらに対する抗体を用いた免疫組織化学法でそれらの発現を球海綿体筋で調べた。(2)BDNF、NT-3、CNTF、IGF-Iの相補性DNAをもちいて、それらをコードしているmRNAの発現をインサイチュ・ハイブリダイゼイション法で調べ、次の結果を得ることができた。 (1)球海綿体筋はCNTF、NT-3に免疫陰性であったが、BDNF、IGF-Iに一部免疫陽性反応が認められた。 (2)球海綿体筋細胞および筋内膜の線維芽細胞細胞はCNTF、IGF-I、BDNFのmRNAを発現しなかったが、筋内膜の線維芽細胞はNT-3のmRNAを発現した。
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