研究概要 |
魚類配偶子形成の内分泌制御における2種類の生殖腺刺激ホルモン(GTH)受容体の機能に迫るべく、異なる生殖特性を持つ複数の魚種から受容体遺伝子を単離し、それらの発現動態を比較することとした。今年度は近年モデル生物として脚光を浴びておいるメダカより、GTH受容体とその類縁遺伝子のcDNAクローニングを行った。4種類の遺伝子が単離され、相同性検索の結果、それらうちの2種はGTH I(FSH)受容体、GTH II(LH)受容体遺伝子であることが判明した。さらに残りの2種は甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体様の遺伝子であることが判明した。メダカは光に同調した日周性の産卵周期を持ち、産卵期の卵巣では数群の卵群を形成し、それぞれが良く同調して発達することが知られている。そこで各卵群を経時的(排卵前47-2時間)に単離してそれぞれにおけるFSH受容体、LH受容体遺伝子の発現動態をRT-PCR法により解析した。その結果、FSH受容体は排卵20時間より以前に発現しており、これ以降減少するのに対して、LH受容体は排卵前20時間前後に発現のピークを迎えた。この結果はいくつかの魚種で示されている結果と類似しており、今後卵母細胞の発達状況と詳細な照合を行うことで2種の受容体の卵形成における機能に迫れるものと考える。一方、アマゴFSH、LH両受容体遺伝子の転写開始点(mRNAの5'末端)を同定し、さらにこれらの結果をもとに当該遺伝子の5'上流領域(FSH 1.4kb, LH 2.2kb)をクローニングした。これらをルシフェラーゼレポーターベクターに挿入し、ステロイド受容体発現培養細胞内においてプロモーター活性を測定したところ、エストロゲン、アンドロゲンによる転写調節は観察されなかった。今後、この系を用いてステロイド以外の転写調節系について検討を行う予定である。
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