研究概要 |
エクジソンリン酸化酵素Ecdysone kinase (EKinase, ATP : ecdysone phosphotaranferase)は,遊離型エクジソンを基質としてエクジソン22リン酸(E22P)の生合成を触媒する酵素である.この酵素は,今のところ昆虫のみで見出されたユニークな酵素である.そこで本研究は,エクジソンリン酸化酵素の酵素化学的な解析,精製遺伝子の解析を目的として行われた.まず,EKinaseの測定法を確立した.すなわち,基質として[^3H]Eを用い,ATPをリン酸供与体とし,生成された[^3H]E22Pをシリカカラムを用いて分離し,放射活性を測定した.この酵素は可溶性画分に存在し,最適pHは7.5,最適反応温度は36℃であった.次に,酵素をBlue Sepharose, Chelating Sepharose, Superdex 200pg, MonoQなどにより精製した.ゲルろ過(Superdex 200pg)と陰イオン交換クロマト(MonoQ)にかけると,酵素活性は急激に低下することから,精製・純化は困難であった.結局,出発材料を多くして(約300gの卵巣),電気泳動(SDS-PAGE)で単一のバンドに精製できた.酵素の分子量はSDS-PAGEで約30KDaと推定された.この結果はゲルろ過で得た値とほぼ敵していた.精製標品をトリプシンで分解し,得られたペプチドのアミノ酸配列を解析したところ,カイコの卵黄タンパク質の一種である30Kタンパク質が混在していることが判明した.現在,HydroxyapatiteやATP-agaroseなどを用いて精製を継続中である.
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