本科研費プロジェクトにおいては、それまで全く明らかにされていなかったニホンミツバチの個体およびコロニーレベルでの活動に関する日周期性と概日性の特徴を調べた。個体レベルでは、全暗恒常条件(DD)下で23.1時間の自由継続リズムを、全明恒常条件(LL)下で24.4時間のそれを示した。さらに様々な明暗サイクルで同調すること、温度補償性があること、位相反応応答があることが示された。これらの観察は、この種がサーカディアンリズムに支配された体内時計によって一日の活動をコントロールしていることを示している。さらにコロニーを、温度・光・湿度などの環境をコントロールできる人工気象装置に入れて、巣口での出入りの活動リズムをみると、DDとLLで同様の傾向をみることができた。また給餌条件によって活動期が変化することが確かめられた。ついで科研の開始時点では、またクローニングがなされていなかったミツバチのperiodgeneのcDNAシークエンスを解明した。その結果、推定アミノ酸組成で1124と1116の2種類のcDNAをクローニングできた。8アミノ酸の有無の機構について遺伝子(gene)レベルでシークエンスを調べた結果、オルタナティブスプライシングの結果出来るspliced variantsであることを確かめた。さらにORFの5'末に5アミノ酸を支配するspliced variantsを確認し、合計4種(α、β、γ、δ)のバリアントが存在することを明らかにした。脳、複眼、触覚、筋肉、中腸におけるperiod遺伝子mRNAの発現量をLight Cyclerにより測定した。その結果、脳にあると想定される個体全体のリズムを決定する主時計の他に、各組織にも末端時計が存在しそれぞれの組織のリズムに関わっていると考えられる結果を得た。
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