研究概要 |
ウナギの脳切片をKluver-Barrera染色し、ニジマス・金魚・ゼブラフィッシュ・ナマズの脳を参考にして、脳地図を作成した。嚥下行動の運動神経核として、哺乳類では舌咽神経核(MNIX)と迷走神経核(MNX)が知られているが、ウナギではこれら2核は複合体(Glossopharyngeal-vagal motor complex, GVC)を形成していることを明らかにした。また血液中に注入したEvans blue(EB)で染まる脳部位を検索したところ、magnocellular preoptic nucleus(PM)、nucleus anterior tuberis(NAT)、最後野(AP)のニューロンがEB陽性であった。この3箇所は脳室周囲器官と考えられ、血液中で生じた飲水調節因子に最初に反応する脳部位だと考えられる(J. Fish Biol.に投稿中)。 ウナギの飲水行動に関与する7つの筋(胸骨舌骨筋、第3鯛筋、第4鯉筋、鯉蓋筋、咽頭筋、上部食道括約筋(UES)、食道筋)に、EBを20ul注射し、4日後に脳を潅流固定し、EBを取り込んだ神経核を捜したところ、spinooccipital motor nucleus(NSO)が胸骨舌骨筋に神経を伸ばし、残りの6筋はGVCからの神経支配を受けていることが分かった。またこの6筋を支配する神経はGVC中で吻側から尾側へと、筋の配置と同じ順序で並んでいた(viscerotopic organization)。EBを取り込んだこれらNSOとGVC神経はコリンアセチルトランスフェラーゼの抗体に強く反応した。咽頭や食道にEBを打つと、GVC以外に延髄付近の神経節(NG)が染まった。以上の結果を基に、ウナギの飲水行動制御のための神経回路を提案した(J. Fish Biol.に投稿中)。現在、延髄から出ている迷走神経に8本の分枝(X1-X8)が識別できること、そのうちX1はUES内圧を上げると発火頻度を高めること、X4を電気刺激するとUESが収縮することを見つけている。
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