1、リン酸化酵素の精製:ミエリン塩基性蛋白の部分合成ペプチドを酵素基質に用い、ジアシルグリセロールとカルシウムによって活性化される蛋白リン酸化酵素活性を指標にして、イカ網膜抽出液からプロティンキナーゼCの精製をすすめた。この結果、分子量約76kDaの蛋白質が分離された。この蛋白質の部分アミノ酸シークエンスは、ラット脳ジアシルグリセロールキナーゼに高い相同性を示した。そこで、アッセイ系を変更し、ヒストンIII-Sを基質にホスファチジルセリンとカルシウムによって活性化されるリン酸化酵素を検索したがプロテインキナーゼCに相当する酵素活性は検出できなかった。イカ視細胞においては、ホスホリパーゼC (PLC)により生成されるジアシルグリセロールは大量に存在するジアシルグリセロールキナーゼにより直ちにホスファチジン酸に変えられる反応系が主要であり、プロテインキナーゼCによる調節系は無いかまたは極めて微弱であると推定された。2、主要蛋白の分離:ロドプシン、G蛋白質、PLC、ロドプシンキナーゼに加えて、新たにジアシルグリセロールキナーゼが分離精製された。3、蛋白セミミクロアレイの作成:質量分析計のサンプルプレートにデメンジョンを合せたドットブロッターを作成した。PVDF膜にウシ血清アルブミンを吸着させ、これに二価性架橋試薬で蛋白を固定化した。蛋白としてPLCを、検出に蛍光色素をラベルした抗PLC抗体を用いて、蛋白がアルブミンに固定化されている事を確認した。また固定化した抗PLC抗体にPLCが結合することから固定化抗体は活性を保持していることを確認した。この固定化法は高濃度の蛋白試料が必要であり、今後の計画を進めるにはより低濃度蛋白試料に対応できる、架橋試薬を用いた免疫沈降法を採用すべきであると判断された。
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