研究概要 |
淡水産渦鞭毛藻類の多様性の実態を把握するために,北海道を中心に各地の湖沼から水サンプルを採集し,渦鞭毛藻類の種の確認をおこなった。総数で102カ所からの採集をおこなった。光学顕微鏡および走査型顕微鏡で観察を行い,種名の同定をおこなった。また,各種の培養液を用いて培養株の確立も試みたが,実際に培養株の確立まで至ったのはPeridinium bipesなどごく少数に留まった。 本研究の結果,Peridiniium属16種,Peridiniopsis属3種,Glochidinium属1種,Gymnodinium属10種,Amphidinium属1種,Ceratium属3種,Cystodinium属1種,Tetradinium属1種,Woloszynskia属7種の計43種の存在が明らかとなった。今後もさらなる多様性の実体の解明を続けていく予定である。 本研究の目的のもう一つは,淡水産渦鞭毛藻類の系統関係を明らかにし,淡水産種の起源を明らかにすることである。そこで,18S rDNAの塩基配列を決定し,分子系統解析をおこなった。培養が不可能な種については,単細胞PCR法を用いて当該遺伝子をPCR増幅させ,塩基配列の解析をおこなった。系統解析は最大節約法,最尤法,近隣結合法などによった。その結果,淡水産の渦鞭毛藻類の起源は一つではなく,何回か独立して海産種が淡水域に移行したらしいことが明らかとなった。また,分子系統解析に基づき現在の分類体系を再検討したところ,特に,GymnodiniumやWoloszynskiaが多系統であることがわかった。今後は,微細構造を含めた形態形質の再評価の後に分類学的な処理をおこなっていく予定である。
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