研究概要 |
有効種とされてきた4種以外の類似種の分布範囲と考えられる海域から標本の採集に全力を注いだ。特に手薄であった海域であるオーストラリア北部、中国南部および台湾の標本に全力を注いだ。その結果、当初考えていたように、ヒゲダイ種群、ヒゲソリダイ種群、シマセトダイ種群、セトダイ種群およびアンダマンヒゲダイ種群の合計5つの類似種群に明確に区別出来ることが判明した。 一方、模式標本の追跡調査を行ったところ、Hapalogenys guntheri Matsubara,1933の模式標本は東京水産大学に所蔵されていることになっており、東水大では何度かの移転過程で紛失したことになっていた。しかし、松原喜代松博士が異動した京都大学農学部附属水産実験所の一般の標本所蔵のところで、原記載のサイズ、原記載に描かれた全体の標本の特徴、計数形質等から判断して、疑いなく松原(1933)の模式標本であることが判明した。本種は、模式標本が紛失したとされていたため分類学的位置と種の有効性は不明とされてきたが、詳しい調査の結果、現在ヒゲソリダイとされている種であることが判明した。ヒゲソリダイの学名は、現在Hapaologenys nitensとされているが、公称種の模式標本の精査の過程でこれも再検討の余地があることが判明した。 同時に本属の帰属を明らかにするため、申請者が本属に類縁の可能性が極めて高いと考えている近縁魚種の解剖を多数行った。その結果、Lobotes属幼魚は下顎小孔が10孔あることが判明し、ヒゲダイ属魚類と極めて近縁であることが示唆された。 上述の成果は、現在論文執筆中で、ようやく本分類群の全体像が把握出来、突破口を見いだしたことになり、次年度から執筆と出版の方に全力を注げることとなった。
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