昨年、ヒゲダイ属の公称種の各タイプをすべて調査が済んだ。有効種とされてきた4種以外の類似種の分布範囲と考えられる海域から標本の採集に全力を注いだ。特に手薄であった海域であるオーストラリア北部、中国南部および台湾の標本に全力を注いだが、中国の標本は借用および採集が困難で1個体も得ることが出来なかった。しかし、当初考えていたように、ヒゲダイ種群、ヒゲソリダイ種群、シマセトダイ種群、セトダイ種群およびアンダマンヒゲダイ種群の合計5つの類似種群に明確に区別出来、またそれらの各類似種群内の幾つかのタイプが別種になるかどうかの詳しい検討を行い、シマセトダイ種群、セトダイ種群およびアンダマンヒゲダイ種群は、多くの標本から形態的な違いは種内変異であることが、ようやく判明した。しかし、ヒゲダイ種群とヒゲソリダイ種群は、15年前ではありふれた種類であったと漁業者から聞いているが、近年の資源の急激な枯渇しているようで、特にこの2年の調査で、ヒゲダイ種群は、わずか1個体のみしか採集出来なかった。両類似種群の資源の枯渇の理由は不明である。 同時に本属の帰属を明らかにするため、申請者が本属に類縁の可能性が極めて高いと考えている近縁魚種の解剖を多数行った。その結果、Lobotes属幼魚は下顎小孔が10孔あることが判明し、ヒゲダイ属魚類と極めて近縁であることが示唆されたが、他の種類でも下顎小孔を持つ魚類を探す必要性が出てきた。しかし突破口を見いだしたことになり、執筆と出版の方に全力を注ぐ。
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