研究課題/領域番号 |
13640706
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
篠原 現人 国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (10280520)
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研究分担者 |
白井 滋 独立行政法人水産総合研究センター, 日本海区水産研究所, 室長
矢部 衛 北海道大学, 水産科学研究科, 助教授 (80174572)
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キーワード | 日本海 / 深海性魚類 / 種分化 / ゲンゲ科 / カジカ亜目 / 板鰓類 / シキシマハナダイ科 |
研究概要 |
日本海の深海性魚類相を特徴づけるゲンゲ科、カジカ亜目、板鰓類の形態学的ならびに遺伝学的な調査を進めた。本年度は大和堆海域の400-1600mの水深帯から標本を採集し、昨年度得られなかった若魚や小型種を多数得ることができた。さらに大和堆以外にも西海区水産研究所やのとじま水族館の協力を得て日本海南部や沿岸部の標本を入手し、本海域に出現する深海性魚類の分類を進めた。また東北区水産研究所や北海道大学の協力を得て比較に必要な本州太平洋岸およびオホーツク海の標本を得、特にゲンゲ科内の属間-種間の系統関係を重点的に調べている。本年度は以下の新知見を得ている。 1)日本海の固有種と考えられているゲンゲ科のノロゲンゲは色彩(白色・暗色)と体形(長・短)でタイプ分けできるが、ミトコンドリアDNAシトクロムb領域の比較からは種レベルの差異を見いだすことができなかった。これらの分類を明確にするためには、遺伝的な調査をさらに進めるとともに外部形態だけでなく内部形態の詳細な比較が必要と考えられた。また東北太平洋側からノロゲンゲに良く似た種が採集され、日本海のノロゲンゲとの分類学的な関係を調査中である。 2)日本海と東北太平洋岸のゲンゲ科各種の系統関係を遺伝学的に調べた結果、両地域に共通するマユガジ属が非単系統群になる可能性が得られた。本属の形態学的な形質(標徴形質を含め)を再検討し、属の特徴を明確にする等の分類学的措置の必要性が示唆された。 3)日本の深海性魚類相についてシキシマハナダイ科の稀種が加わることが明らかになった。発見した標本は稚魚だったため種までは同定できなかったが、今後成魚が採集される可能性が高い。またこの発見から日本海の深海性魚類相の成立に東シナ海など南方系の要素も関連づける必要があると考えられた。
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