研究課題/領域番号 |
13640708
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
遊川 知久 国立科学博物館, 筑波研究資料センター, 主任研究官 (50280524)
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研究分担者 |
横山 潤 東北大学, 大学院・生命科学研究科・生態システム生命科学専攻, 助手 (80272011)
三吉 一光 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教授 (60312237)
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キーワード | 生活形 / 着生 / 菌寄生 / Cymbidium / ラン科 / 分子系統 |
研究概要 |
シュンラン属(Cymbidium Sw.)は、東〜東南アジア全域からオーストラリアにかけて約50種が分布する、ラン科の多年生草本である。本属においては、地生、岩生、着生と生活形が分化し、さらにCAM型光合成や完全菌寄生が進化するという、属レベルでは他に類例を見ない、生活形と栄養摂取様式の多様化が生じている。 本研究ではシュンラン属の3亜属15節を網羅する35種と外群となる16分類群を用いて、葉緑体DNA上のmatK遺伝子、18-26S核リボソームDNA遺伝子のITS1およびITS2の配列を合わせた約2,400bpの塩基配列を用いて、系統樹を構築した。さらに系統樹を参照体系として、生活形・栄養摂取様式に関わる形質の進化を推定した。主な結果は、以下の通りである。 (1)シュンラン属は単系統となった。(2)亜属レベルではCymbidiumとCyperorchisが、偽あるいは多系統群となった。(3)節レベルではAustrocymbidium、Cyperorchis、Iridorchisが、偽あるいは多系統群となった。(4)菌寄生に強くシフトするPachyrhizanthe節(マヤランなど)はGeocymbidium節と姉妹群となり、完全菌寄生はシュンラン属において派生形質であることが明らかになった。またPachyrhizanthe節を独立属とするNakai(1931)の見解は、支持されない。(5)本研究で得られた系統樹からは、シュンラン属において地生と着生のいずれが派生形質であるか明らかにならなかった。今後、より解像度の高い系統樹を構築する必要がある。(6)葉の柵状組織、葉の下皮の厚壁繊維の欠落、匍匐茎、ageotropic rootは、シュンラン属において複数回進化したことが明らかとなった。それぞれの形質の進化は、光ストレスの増大、地生化、菌への強い依存、着生化と関連すると考えられる。
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