研究課題
シュンラン属(Cymbidium Sw.)は、約50種からなるラン科の多年生草本である。本属においては地生〜着生と生活形が分化し、さらにCAM型光合成や完全菌寄生が進化するという、属レベルでは他に類例を見ない、生活形と栄養摂取様式の多様化が生じている。本年度はシュンラン属の菌寄生の実体を明らかにすべく、9種24個体の組織内の共生菌からDNAを抽出し、ミトコンドリアのrRNA遺伝子の塩基配列を用い分子同定した。さらにシュンラン属の分子系統樹(Yukawa et al.2002)を参照体系として、シュンラン属の系統ならびに生活形・栄養摂取様式と、菌寄生との関連を明らかにした。主な結果は、以下の通りである。(1)シュンラン属の根および根茎には大別して3タイプの菌が共生していた。(1)Rhizoctoniaなどのいわゆる「ラン菌」、(2)通常は「樹木の外生菌」として生活する担子菌のグループ、(3)既存のデータと一致しない所属不明の担子菌のグループ。(2)シュンラン属の系統と共生菌との関連は認められなかった。(3)シュンラン属の生活形と共生菌の関連を調べると、着生種には「ラン菌」のみが共生した。地生種にも「ラン菌」は常に共生し、さらにいくつかのサンプルでは「樹木の外生菌」が共生した。(4)シュンラン属の栄養摂取様式と共生菌の関連を調べると、独立栄養型の種は「ラン菌」のみか「ラン菌」に加え「樹木の外生菌」と共生するが、完全菌寄生種は「樹木の外生菌」とのみ共生した。
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