研究課題
基盤研究(C)
シュンラン属(Cymbidium Sw.)は、約50種からなるラン科の多年生草本である。本属においては地生〜着生と生活形が分化し、さらにCAM型光合成や完全菌寄生が進化するという、属レベルでは他に類例を見ない、生活形と栄養摂取様式の多様化が生じている。本研究ではまず、シュンラン属の分子系統解析を行い、形質進化を解明するにあたって参照体系となりうる系統図を構築した。一方、シュンラン属の生活形と栄養摂取に関わる形質について調査し、さらに分子系統図上に各形質の形質状態を再配置し、形質進化の解明を試みた。その結果、以下の諸点を明らかにすることができた。(1)生活形の祖先形質は着生で、地生に少なくとも3回独立に進化した。(2)完全菌寄生のマヤラン(C. macrorhizon)は地生の系統から進化した。(3)着生種の種子の親水性は高く、地生種の種子の親水性は低かった。(4)完全菌寄生種の種子は独立栄養型の姉妹群の種子の1/2-1/3.5の長さだった。(5)根茎は地生種のみで発達し、共生菌の主たる生活空間となっていた。(6)葉の厚壁繊維の発達と着生化の程度が相関した。(7)少数種で観察された葉の柵状組織と気孔の両面での分化は、強い光ストレスに適応した形質と考えられた。(8)共生菌を分子同定した結果、シュンラン属の根および根茎には少なくとも2タイプの菌が共生していた。(1)Rhizoctoniaなどのいわゆる「ラン菌」、(2)「樹木の外生菌」として生活する担子菌のグループ。(9)シュンラン属の系統と共生菌との関連は認められなかった。(10)シュンラン属の生活形と共生菌の関連を調べると、着生種には「ラン菌」のみが共生した。地生種にも「ラン菌」は常に共生し、複数のサンプルではさらに「樹木の外生菌」が共生した。(11)シュンラン属の栄養摂取様式と共生菌の関連を調べると、独立栄養型の種は「ラン菌」のみか「ラン菌」に加え「樹木の外生菌」と共生するが、完全菌寄生種は「樹木の外生菌」とのみ共生した。
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