研究概要 |
[標本の収集]本年度は,本州:福島県(桧枝岐)および岡山県(高梁市臥牛山),九州:大分県(九重山系牧戸峠付近)および鹿児島県(霧島山系韓国岳)において,メダカハネカクシ属ハネカクシの収集を試みた.福島県の調査では,、Hemistenus亜属の新種と考えられる個体を採集していることが判明した.また,大分県での調査では,Hypostenus亜属に含まれる,明らかに新種と考えられる個体を採集した. [種差の認識]これらの新種については,雄交尾器の内部構造を詳しく研究し,近縁種との比較を行った.その結果,交尾のときに性嚢を雌の体内に送り込む操作を補佐する,中央縦バンド(median longitudinal band)と中央ホック(median hook)の構造が近縁種のものと明らかに異なっていることがわかった.したがって,これらの特異な固有形質を用いて,それらの新種は独立の'形態種'として,カテゴリー化が可能であるということがわかった. [クラス概念の研究]系統学におけるメタカテゴリーである個物(individual)という概念が,体系学におけるメタカテゴリーであるクラス(class)という概念に変換可能であるという視点に立ち,本年は私は学問'生物体系学'の構築を進めた.体系学では,クラスは単型的クラスと多型的クラスに区分けできる.今回獲られた新種は,採集された個体すべてに共有された新形質だけで定義可能なものであるので,単型的クラスと見なされる,と結論づけた.また,クラスと個物のメタカテゴリー変換に関する方法をも研究した.
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