フォノンを制御するデバイスを設計するための基礎を与えることを目標に、種々の超格子構造中のフォノン伝播について理論的な基礎研究を行った。今年度は昨年度に引き続き、界面に対して斜めの波数ベクトルをもつフォノンの解析を数値計算的手法により行った。周期多層構造中を伝播するフォノンに生じるブラッグ反射としては、同じモード間で生じるもの("intramode"Bragg Reflection)の他に、異なるモード間で起こるもの("intermode"Bragg Reflection)が存在する。これらの定性的に異なるブラッグ反射に対応して、周波数ギャップも分類される。一方、表面や欠陥層などによって超格子の周期性が壊されている場合、周波数ギャップ中に局在振動モードが生じることはよく知られている。本研究では、定性的に異なる3種類の周波数ギャップ内に生じた局在振動モードが、共鳴相互作用によって超格子中を伝播するフォノンに及ぼす影響を明らかにした。特に表面を有する超格子に対して、1つのモードのみが確率1で反射され他のモードが消滅する、いわゆる完全共鳴反射が生じることを示した。この完全共鳴反射は、モード変換を伴うブラッグ反射がおきる周波数ギャップ内でのみ生じる。さらに、この完全共鳴反射は1チャンネルの対称2重トンネル接合における共鳴トンネルとして解釈できることを明らかにした。 また、これまで1次元超格子に対して行ってきた解析を、周期的な構造を持つ量子細線(ナノワイヤー超格子)に拡張する試みを行った。第一段階として数学的にもっとも取り扱いやすいtorsionalモードと呼ばれる横波に対して分散関係と透過率・反射率の定式化を行った。
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