本研究では、薄いSOI(Silicon-on-Insulator)層が、真空中加熱により規則配列したSiアイランドに変形する現象を利用して、(1)SOI細線構造(Si光導波路)を局所的にアイランド化させ、導波路中に一次元周期構造を形成すること、(2)一次元Siアイランド列を波長フィルター等の光学素子へ応用すること、を目的として研究を進めてきた。成果の概要は、以下のとおりである。 SOI層の初期膜厚を局所的(空間的)に変化させることにより、熱凝集Siアイランドの選択形成を実現した。また、部分的にSOI層を熱酸化膜で覆うことによっても、アイランドの選択形成が可能であることがわかった。 SOI細線の幅、膜厚、細線形成の結晶方位、および加工プロセスの違い(選択酸化/選択エッチング)をパラメータとして、SOI細線のアイランド化を詳細に評価した。その結果、膜厚が約3nm、線幅が1μm以下の選択酸化プロセスによる細線を熱処理することで、Siアイランドの1次元配列が可能となった。アイランド列は、細線両端に沿って2列同時に形成され、アイランド列間には、極薄のSi層が残存する。細線形成の結晶方位に依存しないため、90度曲げやT分岐を施した部分でも、エッジに沿った配列が維持される。アイランドサイズが〜50nmと小さいため、残存Si層をトンネル接合とする一次元単電子トンネル接合アレイとして利用できる可能性がある。 細線の幅や膜厚を大きくしたり、加工に異方性エッチングを用いた場合には、規則配列が見られなくなる。フォトニック結晶利用に適切な100nmサイズのアイランドを形成するには、初期SOI膜厚を7nm程に設定する必要があるが、この場合、アイランドは規則配列せず、細線パターン内にランダムにアイランドが形成される。フォトニック結晶利用に向けたアイランドの規則配列を実現するには、さらに検討が必要がある。
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