ZnOを用いた高効率発光デバイスの実現に必要な低抵抗p型薄膜の成長を実現するため、本研究では光励起有機金属気相成長法(MOCVD)によるZnO単結晶薄膜の成長とその成長メカニズムの解明、窒素ドーピングに取り組んでいる。 今年度は、下記1〜3の成果が得られた。 1.in situ分光計測(原料ガスの吸収スペクトルの測定) p型成長層をえるための窒素ドーピングに用いるターシャリーブチルアミンの分解反応と亜鉛と酸素の原料ガスとの気相反応の有無を調べ、400℃前後での低温ドーピングに適することを示した。 2.原料ガス純度の検討 前年度は高純度なアンドープ酸化亜鉛の成長に成功したが、今年度は原料ガスの交換によりキャリア濃度が上昇した。5Kのフォトルミネッセンス測定では自由励起子による発光が見られなくなり純度の悪化が確認された。原因としては亜鉛原料の中に含まれる塩素によると考えられる。 3.窒素ドープ酸化亜鉛薄膜の評価 5Kでのフォトルミネッセンス測定により石英基板上の窒素ドープ酸化亜鉛薄膜で窒素アクセプタによると考えられる束縛励起子発光を観測し、ホール効果測定の結果10^<16>cm^<-3>台のp型伝導が得られた。しかし、酸化亜鉛基板の場合はアクセプタの混入は認められなかった。これは結晶方位の違いにより窒素の取り込み効率または亜鉛/酸素サイトに入る効率が変化するためと考えられる。 今後、原料ガスの純度の改善と酸化亜鉛基板でp型を得るための窒素ドーピングの条件を調べていく。
|