GaNに代表される窒化物半導体は青色発光ダイオードや青色レーザーダイオードなどの短波長発光素子用材料として活用されている。しかしながら、GaNには、それ自身の単結晶基盤が存在しないために、サファイア基板やSiC基板を基板結晶材料として用いている。このことが、GaN系窒化物半導体素子の製造コストを高くし、また加工性を低くしている一つの原因である。 本研究では、低コストで大面積の擬似的なGaN結晶基板を開発する基板技術の開発を目的とする。具体的にはSi基板を用いて、その上に高品質なGaN層をヘテロエピタキシャル成長する。Si基板を用いる場合には、Si材料が活性なため、窒化物半導体の構成元素である窒素と激しく反応(Si基板の窒化反応)を起こし、GaN材料の直接的なヘテロ成長を行うことが困難である。そのため、本研究では、薄いγ-アルミナ層を中間層として用い、Si基板表面の反応活性な性質を抑制した。 アンモニア(NH_3)ガスを窒素の供給源とするガスソースMBE法により、GaNヘテロエピ層の成長を行った。γアルミナ/Siハイブリッド基板上におけるNH_3ガスソースの熱分解を効率よく進めるために、成長温度を800℃として、NH_3ガスソースMBE法によるGaNエピ層の成長条件を割り出した。結晶の成長方位字性を調べた結果、γアルミナ/Si(111)基板では、六方晶GaNが安定に成長することを確認した。一方、γ-アルミナ/Si(100)基板では、六方晶と立方晶の混在する程度がNH_3の供給量に依存して変化することを見いだした(論文1)。さらに高品質な擬似GaN基板を作成するためには、成長温度900℃以上におけるGaNエピ層の成長過程を明らかにする必要がある。基板温度900℃以上では、GaNバッファー層が再結晶化する。本研究では、その過程をRHEED観察によりその場観察し、AFMによる表面形状観察を行った。その結果、GaNエピ層は、バッファー層を一端900℃以上でアニールしてから成長を行うことによって、より平坦な成長面を維持すること力判明した(論文2)。今後の展望として六方晶GaNの安定な成長条件を探り、さらに1000℃以上の成長温度域におけるGaNの成長様式ならびに成長過程を解明していく。
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