前年度研究の成果をもとに、炭化シリコンへリン不純物の表面での濃度が1.5x10^<21>/cm^3となるように、イオン注入を行った(イオン注入量:1.4x10^<16>/cm^2)。本試料に関して、下記の知見を得た。 1.イオン注入されたリン不純物は1000度における熱処理によって15%程度の活性化率(シートキャリア濃度/イオン注入量)を示し、イオン注入層の再結晶化とともに格子位置を置換する。しかしながら、シート移動度は4cm^2/Vs程度である。 2.低シート移動度の原因を調査するために、断面透過電子顕微鏡法を用いてイオン注入層中の結晶性を評価したところ、柱上欠陥が観察された。この欠陥は、1500度における熱処理を行った試料には観察されず、この試料のシートキャリア移動度は30cm^2/Vsであった。イオン注入層中に残存するこれらの欠陥が、キャリア移動度の低下の原因であることを突き止めた。 3.1500度において熱処理を行った試料のシート抵抗は200Ω/□程度であり、十分に低いが、シートキャリア濃度は約1x10^<15>/cm^2に低下した。 4.前記のシートキャリア濃度の低下を調査するためにリン不純物分布を2次イオン質量分析法により評価したところ、リン不純物濃度の低下と再分布が確認され、イオン注入層からのリン不純物の外向拡散が原因であることがわかった。 5.以上の試料に対して、リン不純物の格子位置を同定するイオン散乱実験を行ったが、バックグランドノイズが予想したよりも大きく、リン不純物からの有意な信号を捕らえることができなかった。バックグランドノイズを除去する測定法が必要であることが判明した。
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