研究概要 |
本研究によって、炭化シリコンヘイオン注入された窒素およびリンの置換格子位置の電気的活性化について以下の知見を得た。 1.炭化シリコンヘイオン注入された窒素の挙動について イオン注入量が1×10^<15>/cm^2以下、窒素濃度に換算して約2×10^<20>/cm^3以下の濃度でイオン注入された窒素の電気的活性化は1,200℃における活性化熱処理によって達成される。イオン注入された窒素の結晶格子位置の置換はイオン注入損傷の熱処理による除去と同時に起こっていることが、イオン散乱実験結果との比較から導ぎ出される。上記のイオン注入量を超える濃度でイオン注入された窒素不純物窒不純物から発生する炭化シリコン注入自由電子濃度はむしろ減少する傾向にある。これは、過剰にイオン注入された窒素不純物が電気的に不活性な状態にあり、結晶格子置換位置に存在しないことを示唆する。 2.炭化シリコンヘイオン注入されたリンの挙動について イオン注入層が非晶質化する条件においてリン不純物が炭化シリコンヘイオン注入された場合、非晶質層が単結晶層に再結晶化する過程で、イオン注入されたリン不純物はすでに結晶Si格子位置を置換し、速やかに電気的に活性化し、炭化シリコン中に自由電子を発生する。一方、イオン注入時におけるイオン注入層の非晶質化を避けるために、イオン注入時に炭化シリコンを過熱する昇温注入されたリン不純物の場合、活性化熱処理温度の増加とともに自由電子濃度が増加することから、昇温注入時に結晶Si格子位置を置換できなかったリン不純物の結晶Si格子位置の置換が、熱処理温度の増加とともに進行していることを示している。しかしながら、この実験試料から得られた自由電子濃度は非晶質化したイオン注入層が単結晶へ再結晶化した場合に得られた自由電子濃度を下回る。イオン注入されたリン不純物を不活性化する欠陥が存在するか、もしくは過剰にイオン注入されたリン不純物は、結晶Si格子位置ではなく、結晶格子間を占めていると考えられる。
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