研究概要 |
省資源・無毒性薄膜太陽電池の作製を目指し、環境半導体Cu_2ZnSnS_4(CZTS)を光吸収層とした薄膜太陽電池を作製した。本材料での太陽電池としての報告例としては、信州大学で340mVの開放電圧、Stuttgart大学で470mVの開放電圧と2.3%の変換効率、本研究室で522mVの開放電圧と2.62%の変換効率が報告されている。 本研究では、基板前処理にUV洗浄器を導入すると同時に、残留不純物の低下を狙った硫化装置の改良、CBD-CdSのCd源の変更(CdSO_4→CdI_2)、CIGS系に用いられているナトリウム添加による効果の三項目について調査・研究を行った。 光吸収層CZTS薄膜の作製には、気相硫化法を用いた。従来の石英管反応炉からターボ分子ポンプを用いたSUSチャンバーの気相硫化装置に換えることにより、残留ガスの影響が軽減され良好なCZTS薄膜の作製に成功した。SEM観察により結晶粒径の大きなCZTSの成長が確認されたものの、Mo/CZTS界面には問題があることが明らかとなった。溶液成長法による界面層CdS作製では、Cd源に従来のCdSO_4の替わりにCdI_2を採用した。この結果、太陽電池出力特性の曲線因子が従来の0.4台から0.6台へと大きく改善され、変換効率も従来の2.62%から4.25%まで大幅に上昇した。さらに、ナトリウム添加による効果を検証するため、Na_2S/Mo/SiO_2/SLG基板上でCZTS系薄膜太陽電池を作製した。その結果、FF:0.60,変換効率:5.45%の値を得た。これらの値は、本材料系太陽電池におけるトップデータである。 現在、更なる薄膜の高品質化を図るため、基板表面からの赤外線放射加熱器による加熱硫化条件の最適化を行っている。
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