研究概要 |
環境負荷の小さな太陽電池を開発するために、Cu_2ZnSnS_4(CZTS)を光吸収層とした新型薄膜太陽電池を作製した。CZTS薄膜は、約1.5eVの禁制帯幅と10^4cm^<-1>台の大きな光吸収係数をもっている。これらの光学的特性は、CZTS薄膜が光吸収層として極めて有望であることを示している。さらに、CZTS薄膜は希少元素や有毒性元素を構成元素として含まないことから、Cd-free界面層との組み合わせによって、近い将来に無毒性薄膜太陽電池の実用化が期待できる。 これまで我々は、Cu, Sn, ZnSの積層蒸着プリカーサを気相硫化することによってCZTS薄膜の作製を行ってきた。ZnO:Al/CdSおよびCZTSのヘテロ接合で得られた最良の変換効率は5.45%であった。 本研究では、3種類の異なるプリカーサを用いたCZTS系薄膜太陽電池の特性を調査した。これらは、(1):これまでと同じCu/Sn/ZnS積層プリカーサ、(2):積層順を変更したSn/Cu/ZnS改良型プリカーサ、(3):プリカーサ中の硫黄含有量の増加と内部拡散の促進を意図したCu/SnS2/ZnSの5周期プリカーサである。CZTS光吸収層の組成の最適化とプリカーサ積層順、硫化条件を最適化することによって、本研究では、4.53%の変換効率を達成した。また、多周期プリカーサを用い、高真空中でアニール処理することによって最高曲線因子0.66を達成した。従来の積層プリカーサによるCZTS薄膜と比較して、多周期プリカーサによるCZTS薄膜の表面形状は大幅に改善されていることが明らかとなった。
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