本研究は、現有設備の単収束磁場型質量分析計(Mass)を用いて、カーボンナノチューブから電界蒸発により生成される炭素クラスターの質量数を正確に同定し、これまで既に発見しているC^+_<20>の大量生成条件を調べると共に、高質量域での新規マジッククラスターの探索を行なうことを目的としている。本年度は、更に正確な質量数の同定を行なうために電界蒸発実験中のMass試料室内にキセノンを導入し、その同位体の電界電離質量スペクトルをレファレンスに用いた。そして、作製方法および精製方法が異なる7種類のカーボンナノチューブを試料に用いて、観測されるカーボンクラスターの質量数を同定した。その結果、C^+_<20>はマジッククラスターとしては観測されず、新たにC^+_<29>およびC^+_<32>が、これら7種類のカーボンナノチューブに共通のマジッククラスターであることが判った。C^+_<20>が観測されなかった理由は現在のところ不明であるが、昨年度にMassの排気系を総べてドライなポンプに交換し、到達真空度も1桁以上向上していることから、C^+_<20>の生成過程に真空槽内の雰囲気影響を与えている可能性がある。來年度に詳細な検討を行なう予定である。
|