本研究では、ダイヤモンド薄膜およびDLC薄膜に水素のイオンビームを注入し、注入した水素イオンの濃度分布を測定することによって、リフトオフ法による薄膜の剥離、ならびに自立単結晶薄膜の作成を目的とするものである.この研究の特徴は、剥離した自立単結晶薄膜を得るというよりも、イオンビーム注入における表面や界面における結晶性の変化を表面科学の手法を用いて調べようとするところにあり、これはより物性のすぐれた薄膜を得るためには必要不可欠であるとともに、現状においては100%の確率で薄膜が剥離してくれないので(正確に言えば、本研究においてはほとんどうまく剥離してくれなかった)、その原因を探るためにも重要である。今回の科学研究費補助金の研究期間は2年間であったため、高速イオンビームを用いた水素含有量の測定手法の開発ならびにDLC薄膜の製作、炭素化合物におけるイオンビーム照射の影響を重点的に調べた。その結果、高速イオンビームを用いた水素の定量分析法であるERDA法を高知工科大学において始めて構築し、水素の注入によって硬さが異なるDLC薄膜の作成が可能となった。炭素化合物におけるイオンビーム照射(注入)実験では、炭素以外の軽元素が結合を切って脱離することがわかった。
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