レーザー媒質の飽和増幅を介して有効な利得回折格子を誘起するのに必要な時間はレーザー活性種の誘導放出断面積に反比例する。 レーザー色素の誘導放出断面積は代表的な固体レーザー結晶であるNd:YAGの1000倍近く大きいため、ピコ秒パルスで効率良く二光波混合、位相共役波発生が可能である。本研究では、ローダミン6G色素をPMMAポリマーに添加した固体レーザー色素を用いた前方型縮退四光波混合配置によって自己回折光(前方型位相共役波)発生を行った。励起光にはモードロックQスイッチNd:YAGレーザーの第二高調波(パルス幅<20ps)を用いて、ポリマーを側面励起した。四光波混合には、光パラメトリック発生器によって発生させた577nmのピコ秒パルスレーザー(パルス幅<15ps)を用いた。 側面励起法を用いるとポリマー全域を均質に励起できるため、400倍の小信号利得が確認できた。結果として、ポリマーに入射した信号光の2倍以上のエネルギーを持つ非常に強い自己回折光を発生させることに成功した。この時の励起フルエンスは20mJ/cm2、入射信号光のフルエンスは〜0.1mJ/cm2であった。結合波方程式を用いて理論解析し、回折効率がほぼ妥当な数値であることを確認した。 現在、回折効率の更なる向上、自己回折光の立ち上がり時間測定、後方位相共役波配置による位相共役波発生を進めている。
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