研究概要 |
レーザー色素の誘導放出断面積は代表的な固体レーザー結晶であるNd:YAGの1000倍近く大きく、飽和フルエンスが2桁小さいことから、エネルギーの小さなピコ秒パルスで効率良くかつ高速に位相共役波を発生させることができる。本研究ではPMMAポリマーにローダミン、DCMなどの有機レーザー色素を添加し、固体化した素子(固体色素)を非線形光学素子として用いて、縮退四光波混合によってピコ秒パルスによる位相共役波発生を行った。 固体色素が示す蛍光緩和にはナノ秒以下の短い緩和と数ナノ秒に及ぶ長い緩和が見られる。この緩和過程を詳細に解析し、光学系の最適化を行った。観測された位相共役波の反射率は入射エネルギーの16倍に達した。この位相共役鏡反射率は,ピコ秒領域で観測された位相共役波反射率として、世界最高値である。また、位相共役波のパルスは飽和増幅素子のパルス圧縮効果によってほぼフーリエ変換限界まで圧縮できる。観測できた最短パルス幅は6ps以下である。この位相共役鏡の基本コンセプトは、近赤外で広い利得帯域を示すチタンサファイアや紫外で広い利得帯域を示すCe:LiCAFなどのさまざまなレーザー素子へ応用できるので、紫外から近赤外の波長帯で所望の位相共役鏡をテーラーメードできる。 本研究で開発した位相共役鏡は,超短光パルスシンセシスヘと適用でき,大容量光情報処理,化学反応のコヒーレンス制御、超高速コヒーレント分光などへ応用できる。
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