| 研究概要 |
本研究は,フラクタル現象の光工学への応用において重要となるフラクタル的性質を持つランダムな光波,すなわちフラクタルスペックルに関するこれまでの研究をさらに発展させ,様々な光学領域にフラクタル光波を生成させる方法を開発し,生成された場の特性を明らかにすることを目的としている.本年度は,以下の成果を得た.
1.散乱面の照射条件と散乱強度分布のフラクタル性との関係
これまで,散乱面における照射強度のべき関数の指数として,理論解析では1<D<3の範囲を扱い,実験では1<D<2について検証が行われてきた.考察の対象となるDの範囲を広げるため,計算機シミュレーションにより,0<D<3の範囲で解析を行った.その結果,散乱場の強度相関のD=2における臨界的振る舞い,および2<D<3における定数的振る舞いが理論予測どおり確認された.また,0<D【less than or equal】1の範囲においても,1<D<2の場合と同様に,強度相関がC(r)αr^<2(D-2)>のべき関数に従うことが明らかとなった.
2.結像面におけるフラクタル的スペックルの生成
一様ランダムな散乱面を物体とする二重回折結像光学系において,空間周波数面に透過率が光軸からの距離のべき関数に従う空間周波数フィルタを置くことにより,散乱面の像面にフラクタルな光散乱場が形成できることを実験により示した.また,像面に生じる光散乱場が,基本的にはフラウンホーファー回折におけるフラクタル場と同様であることが,計算機シミュレーションにより確認された.
3.非回折性を有するフラクタル光波の生成
非回折ビームの生成光学系において,物体にフラクタル的特性を導入することにより,フラクタル的非回折光波を生成できることを明らかにした.
|
