研究概要 |
平成13年度は真空外からレーザー変位計を導入し、イオンビームを照射中の試料位置を非接触で常時監視できるシステムの設計と予備測定を実施した。この場合、レーザー光をイオンビームと平行に照射するにはイオンビーム通路にセンサーを入れなければならずこの手法は原理的に不可能であった。光路追跡の検討を行った結果、イオンビームと垂直に導入することとした。 具体的には真空チャンバーの上部から光学窓を通してセンサーヘッド(キーエンス社製KL080)からのレーザー光を導入し、ミーラーで一旦反射させ真空中の試料に照射し、照射光は再びミーラーに反射し、センサーヘッドの受光部に入るようにした。これはメーカーで保証しない新しい手法であるため、実際にどの程度の精度で測定できるか改めて検討する必要があった。それ以外に、真空パッキンの弾力性によりセンサーが動く可能性もあったが、測定中センサーの分解能(3ミクロン)以内で安定していた。ただし問題点として、センサーの表示が安定するのに電源投入後1時間程度かかり測定上十分注意しなければならないことが挙げられる。ミーラーの角度を水平に対し25度としたとき、試料へのレーザー光の入射角度は法線に対し40度であった。従って光路長ΔS(mm)と試料変位ΔD(mm)とにはΔS=1.31ΔDの関係が成立した。位置検出比例計数管(PSPC)上の位置変位ΔPとチャンネルナンバーΔCとの間にはΔP/ΔC=0.132mm/channelの関係があり、試料からPSPCまでの光路長L=40cmを考慮すると,1eVの変化は分光結晶としてEDDT(d=4.404Å)を用いた場合、回折角の変化Δθは0.0113度となった。以上のような条件設定のもとでPIXEの測定実験(バンデグラフ加速器、1.5MeV,プロトンビーム)を行ったところ金属アルミニウムに対する酸化アルミニウムのエネルギーシフト量は0.44eVとなり従来のケミカルシフトとほぼ等しい結果が得られた。
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