研究概要 |
東京証券取引所の個別株価日次時系列データについて,Kalman Filterで推定されたスプレッドと取引高の間とに比較的はっきりとした反比例関係があることが確認された. 併せて,n日ごとにサンプリングした株価時系列での株価変動の分散V(n)について,近似的に, V(n)/n=a/n+b (1) の関係があることも確認された. 式(1)はスプレッドの存在と整合的であるが,Kalman Filterから推定された取引高は,式(1)でのaの大きさを部分的にしか説明できないことも確かめられた.この理由を明らかにするため,価格変動を日中と夜間とに分けて時間間隔を変えながら相関を計測すると,時間間隔をおいた相関の存在が観測され,これらの相関が直接の原因となっていることが分かった.この過程で,いくつかの株価変動の性質も明らかにされた. これらの事実は,オプションの価格付けやリスク管理に重要な意味を持つと考えられる.予備的な考察として,VaRの分布を計測しているが,現時点では,これらと結びつけられる明瞭な結果は得られていない.これは2年目の課題として残されている.
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