研究概要 |
3次元空間に布置されたn個の点に対し,各点間の距離が与えられたとき,その距離をできるだけ満たすよう点の配置(座標)を求める問題を「ディスタンス・ジオメトリー問題(DGP)」と呼ぶ.本件研究では,最適化手法,中でも非凸二次計画問題と半正定値計画問題を援用した,大規模なDGPに対する実用的な数値解法の構築を試みた. 一般に,DGPは,与えられた距離と配置された点間の距離の差を誤差関数で表すことで,その関数の最小化を図り解かれてきた.従来法では,2乗誤差の総和からなる誤差関数の最小化などが行われてきたに対して,本研究では,誤差関数として「絶対誤差」の総和を用いた.絶対誤差関数は,微分可能でなく,そのままでは最小化が困難である.しかし,適当な変換を施すことで,最終的に目的関数が2次の凹関数で制約条件が2次の凸関数となる2次の最適化問題へと帰着させることが可能であった.このタイプの問題は,「非凸2次関数最小化問題」と呼ばれ,典型的な大域的最適化問題である.このような問題に対して,外部近似法や分枝限定法といったアルゴリズムを用いて最適化を試みた.また,本研究では,近年注目されている「半正定値計画法(SDP)」と呼ばれる問題を緩和問題として使うアルゴリズム(SDP緩和法)も提案をした. SDP緩和法では,まずSDPを最適化しそこで得られた解を,固有値・固有ベクトルを用いることで,DGP問題の近似解とできることを示した.数値実験の結果では,ある程度の多数の距離が与えられている問題の場合,精度の高い近似解が得られることが判った.またさらに良い近似解を求めるために,この解を初期解とし,局所探索を実行することを提案した.局所探索に際しては,凸2計画問題を繰り返し解くことで,効率化を図ることができた. 以上のアルゴリズムを,計算機上で実装し,実際のたんぱく質等のデータを使い,アルゴリズムの評価を行った.その結果,点数が数百を超える問題に対しても,従来手法と変わらない精度で解が算出できることが確認できた.
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