研究概要 |
1.研究代表者の従来の研究をさらに発展させる形で,複合Poisson過程が駆動する確率システムの解析に対する重点サンプリング法の枠組みを構築することに成功した。本研究ではGirsanov-Meyerの定理に基礎を置き,やや一般的な観点から複合Poisson過程が駆動するシステムに対する確率測度の変換法を与えることができた。 2.目標到達集合(破壊領域)への約50%の到達率を実現するための極めて簡便な手法を構築し,いくつかの数値例を通じてその有効性を確認することができた。 3.保険に対する数学理論の中核を成すCramer-Lundbergモデルに対して,本研究でのシミュレーション解析手法を応用し,いくつかの数値例を通じてそれが有効であることを確認することができた。この応用は,いわゆる集合的リスク論と信頼性解析との間の数学的構造の類似性に着目したものであり,この研究を通じて今後の両分野の有機的結合が期待できる。 4.過大荷重下でのき裂進展の遅延現象を考慮に入れた,新しい型の確率モデルの構築を行った。このモデルでは,き裂進展過程が,過大荷重の負荷過程をモデル化する複合Poisson過程が駆動雑音となる確率微分方程式で記述されているため,本研究での確率測度変換法に基づく重点サンプリング法を直接適用することが期待できる。 5.通信ネットワークのトラフィック解析に直接的に応用するための新しい確率モデルを構築し,そのシミュレーション解析を遂行した。このモデルも複合Poisson過程が駆動雑音となる確率微分方程式を用いたものであるが,これは従来のトラフィック解析に関する研究では見られなかったものである。さらに,本研究で提案する重点サンプリングスキームを適用し,例えば極めて微小なビット欠損率であっても精度よく推定し得ることを確認した。 6.我々が独自に開発した欠陥生成を含む結晶成長モデル(Solid-by-Solidモデル)を用いて,孔や溝がある基板を埋め込んだときに発生する空孔の構造を,動的モンテカルロシミュレーションにより解析した。その結果,V字型の溝を埋め込んだ際には,溝の底角を2等分する方向に小さい欠陥が連続して発生すること,また矩形の溝を埋め込んだ際には溝の中央部に縦長の大きな空孔が発生するという結果が得られた。溝のアスペクト比が高くなるほど空孔は大きくなり,その構造は無添加浴を用いた実験で観察されるものとよく似ていることを確認した。
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