研究概要 |
本課題の前段階としての萌芽的研究(l1875022)で得られた知見からの進展として,奇数(=r)次同次多項式ポテンシャルによる摂動調和振動子と2(r-1)次同次多項式ポテンシャルによる摂動調和振動子の変数分離可能性が,標準形近似の視点から新たに特徴づけられた.すなわち,これらの摂動調和振動子が2(r-1)次まで同じ標準形を共有するための必要十分条件は,奇数(=r)次同次多項式ポテンシャルによる摂動調和振動子が直交座標系の適当な回転で変数分離可能であること.このとき対応する2(r-1)次同次多項式ポテンシャルによる摂動調和振動子も同じ座標の回転により変数分離可能となることを一般の奇数rに関して証明した.また,変数分離可能性と等価な代数的な条件式も見出されそれは今後の発展においても重要な役割を荷うと期待される.証明には,2項係数を多数含む複雑な代数式が出現するが,r=3,5,7,9の場合にまず数式処理プログラムが正しいことを支持した.この数式処理による結果は,平成13年6月アルバカーキ(米国)で開催された国際会議「Applications of Computer Algebra」にて速報され,同会議の電子プロシーディングスに収録されている.また,本成果の数理物理的な観点を平成13年9月コンスタンツ(ドイツ)で開催された国際会議「Computer Algebra for Scientific Computing」にて発表した.現在,数学的な証明を記した論文を準備中である. 分担者の山口は,微分方程式に対する繰り込み群の方法においてある種の統一的な処方箋を提案した.この処方箋は万能ではないし,また必要な計算が反って増える可能性もあるが,いわゆる「職人技」的な色彩すらある研究対象に対するシステマティックなアプローチという点で面白い結果である.繰り込みと標準形近似とは極めて密接に関連した知見を生み出しているという経緯(山口-南部(1998),上野(2000))から上野と山口とがそれぞれ今回得た結果からさらなる進展が期待できる. 岩井は山口と共同で,非線型(非可積分)ハミルトン系におけるリアプノフ数の幾何学的な取り扱いを定式化した.また,少数多体系に関して「特異配位」を幾何学と力学の関連を明快に論じた.これらは,今後標準形近似を実際的な力学系に応用する際に有用と期待している.
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