研究概要 |
最小二乗法(より詳しくは"線形最小二乗法による多項式回帰")の分野において,基本的に重要でありながら今まで注目されていなかった"内的整合性(endoharmony)"なる性質について,その重要性を指摘し,その性質を持つような手法を探索することを目標に,本研究は始められた.なお一変数の場合,例えば,数式モデルu(t,t_0)=Σ^p_<k=0>a_k(t_0)(t-t_0)^k/k!をデータ(t_i,u_i)に当てはめる場合,窓関数w(τ)を用いるときには,残差平方和Σ_iw(t_i-t_0)(u(t_i,t_0)-u_i)^2が最小になるようにa_k(t_0)を定めるわけであるが,内的整合性とは自然に期待される∂a_k(t_0)/∂t_0=a_<k+1>(t_0)(K=0,...,p-1)が着目点t_0において成り立つことをいう. 始めは内的整合性がどのような条件のもとで成立するかという観点から調べていたが,いくつかの研究会等で発表し参加者からの意見を聞いているうちに,この性質が理論的に厳密に成立する場合と数値的に十分な精度で成立する場合とを峻別して扱ったほうがよいことに思い至った.その方向で理論を再構築し,別ページにリストしてある国内・国外の学会で発表した.発表への質問などを通じて,かなりの理解が得られたと感じられた. 第一年度目には,理論の現状に即して系統的な数値実験を行い,理論の妥当性を確認した.すなわち,一変数の線形最小二乗法による多項式回帰においては,データ点が等間隔に配列しているとき,Gauss型の窓関数を用い,多項式基底としてHermite多項式を採用すると,驚異的な精度で数値的には内的整合性が成立することが確かめられた.(そして,それ以外の場合には内的整合性が成立しないことも.) 第二年度目には,2次元以上の場合の理論を確立し,かつ2次元の地形データ(標高データ)に対して理論を適用し,多次元の場合にも理論が妥当することを確認した.
|