研究概要 |
現在行われている人工股関節の施術では、PMMA骨セメントによる人工股関節と生体骨の結合においてPMMA骨セメントの生体不活性性のために、生体骨の異物反応により生体骨の表面にコラーゲン線維膜が形成され、生体骨とPMMA骨セメントが結合せず、施術後の時間の経過とともにゆるみが生じ、このゆるみがひどくなると耐え難い疼痛を伴うようになり、15年程度経過した時点で10〜20%の患者が再手術を余儀なくされることが問題となっている。また、人工臼蓋材料として使用されるUHMWPEの摩耗粉が人工股関節と生体骨の界面のところに介在することにより、生体骨の融解や壊死を招き、生体骨が痩せ細ることが問題になっている。このようなことに対処するために、人工股関節(臼蓋部)から骨盤までを半径方向に不均質性を持った傾斜機能材料(FGM)からなる不均質中空半球と考えて(接合層を傾斜機能材料で設計して)、次の3つのモデルについて、(1)UHMWPE+UHMWPE/HAp FGM+HAp/Bone FGM+Bone,(2)UHMWPE+UHMWPE/AW-バイオガラスFGM+AW-バイオガラス/Bone FGM+Bone,(3)従来モデルのUHMWPE+PMMA骨セメント+Bone静的・動的両負荷の下でミーゼスの相当応力と変形の数理解析とFEMによる数値解析を行い、次のことを明らかにした。 1.従来モデルのモデル3に対して、モデル1,2は人工臼蓋と生体骨の接合層に生体活性性を有するバイオセラミックスからなるFGMを使用しているため、化学的また物理的に強固に接合する。 2.モデル1,2ともFGM接合層において応力集中を生じるが、相当応力/圧縮強度の比は従来モデルのモデル3より極端に緩和される。 3.人工臼蓋のUHMWPEに発生する動的相当応力は、この材料の単軸引張りの降伏応力を超え、モデル3においてFGM部の材料組成をAW-バイオガラスのlinear, rich, poorなものに変化させても降伏応力以下には設計できない。材料組成以外に幾何学的な最適化も必要である。 以上のように、静的・動的両負荷について解析を行い、接合層にFGMを使用することの有用性を明らかにした。また、骨頭と臼蓋の接触応力の数値解析も一部行い、摩耗粉の生成に関して考察を加えた。
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