構造用セラミックスのき裂治癒現象に関する研究(使用温度下でのき裂治癒挙動と治癒温度での強度特性評価)

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13650076
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 安藤 柱 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40017992)
• 研究分担者: 高橋 宏治 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 講師 (90334630)
• キーワード: き裂治癒 / 構造用セラミックス / その場き裂治癒 / 保証試験 / 曲げ強度 / 繰返し疲労強度 / 静疲労強度 / き裂治癒速度

研究概要

本研究課題名は、「構造用セラミックスのき裂治癒現象に関する研究-使用温度下でのき裂治癒挙動と治癒温度での強度特性評価-」である。本研究の目的は、次の4点である。
(1)筆者等が開発したムライトの使用温度下でのき裂治癒挙動と治癒温度での強度特性評価。(2)筆者等が開発した窒化珪素の使用温度下でのき裂治癒挙動と治癒温度での強度特性評価。(3)き裂治癒能力が優れたアルミナの開発。(4)き裂治癒能力が優れた炭化ケイ素の開発
各目的に対して、得られた主要な成果は以下の通りである。
(A)ムライトに関して。A-1;本ムライトは優れたその場き裂治癒能力(使用温度域でき裂を治癒し、しかもその温度域で充分な強度を有している)を有していることが判明した。A-2;1273K〜1473Kの温度域で、強度を約70%低下させるき裂を無応力下、一定応力下^*あるいは5Hzの繰返し応力下^*で完全に治癒できた。しかも、き裂治癒部はその治癒温度で母材部に等しい強度を有していた。*印の応力下とは、き裂材の強度の約40〜50%の応力下である。
(B)窒化珪素に関して。B-1;本窒化珪素は優れたその場き裂治癒能力を有していることが判明した。B-2;1173K〜1473Kの温度域で、強度を約50%低下させるき裂を無応力下、一定応力下^*あるいは5Hzの繰返し応力下^*で完全に治癒できた。しかも、き裂治癒部はその治癒温度で母材部に等しい疲労強度を有していた。*印の応力下とは、き裂材の室温での疲労限度に等しい応力下である。
(C)アルミナに関して。C-1;き裂治癒能力、強度及び耐熱性が極めて優れたアルミナの開発に成功し、その特性を解明した。C-2;き裂治癒能力、強度及び破壊靭性値が極めて優れたアルミナの開発に成功し、その特性を解明した。
(D)炭化ケイ素に関して。D-1;き裂治癒部の耐熱性を、873Kから1473Kに上昇させることに成功した。

研究成果

• [文献書誌] K.Ando他4名: "(Crack-healing+proof test) : A new methodology to guarantee the structural integrity of a ceramics component"Journal of the European Ceramic Society. 22-1. 121-128 (2002)
• [文献書誌] K.Ando他6名: "Crack healing behavior of Si_3N_4/SiC ceramics under stress and fatigue strength at the temperature of healing(1000℃)"Journal of the European Ceramic Society. 22-8. 1339-1346 (2002)
• [文献書誌] K.Ando他5名: "Crack healing behavior and high-temperature strength of mullite/SiC composite ceramics"Journal of the European Ceramic Society. 22-8. 1313-1319 (2002)
• [文献書誌] 安藤他6名: "構造用ムライトの亀裂治癒能力と治癒材の高温強度特性に及ぼすY_2O_3の効果"材料. 51-4. 458-464 (2002)
• [文献書誌] 北條, 安藤他4名: "窒化ケイ素セラミックスの高温酸化挙動に及ぼす焼結助剤およびSiC添加の影響"材料. 51-11. 1235-1242 (2002)
• [文献書誌] 安藤他4名: "高温域での一定あるいは繰返し応力下における構造用セラミックスのき裂治ゆ挙動"日本セラミックス協会学術論文誌. 110-8. 741-747 (2002)
• [文献書誌] 高橋, 安藤他3名: "窒化けい素セラミックスの曲げ応力下における自己き裂治癒挙動とき裂治癒温度での強度特性"日本機械学会論文集A編. 68-671. 1063-1070 (2002)
• [文献書誌] K.Ando他3名: "Crack-Healing Behavior of Si_3N_4/SiC Ceramics under Cyclic stress and Resultant Fatigue Strength at the Healing Temperature"Journal of the American Ceramic Society. 85-9. 2268-2272 (2002)
• [文献書誌] K.Ando他3名: "Effect of Crack-Healing and Proof-Testing Procedures on Fatigue Strength and Reliability of Si_3N_4/SiC Composites"Journal of the European Ceramic Society. 23-6. 977-984 (2003)
• [文献書誌] Y.W.Kim, K.Ando, M.C.Chu: "Crack-Healing Behavior of Liquid-Phase-Sintered Silicon Carbide Ceramics"Journal of the American Ceramic Society. 86-3. 465-470 (2003)
• [文献書誌] 金, 安藤他2名: "アルミナのき裂治癒挙動とき裂治癒材の強度特性"材料. 52-6(印刷中). (2003)
• [文献書誌] 李, 石田, 安藤: "炭化珪素セラミックスき裂治癒材の強度特性"材料. 52-6(印刷中). (2003)
• [文献書誌] K.Takahashi, K.Ando: "Crack-Healing Behavior Si_3N_4/SiC under Stress and Static Fatigue Strength at the Healing Temperatures of 800,900,1000℃"Journal of the European Ceramic Society. (印刷中). (2003)
• [文献書誌] 渡邊, 米屋, 能代, 〓, 武田, 安藤: "物質科学入門"化学同人. 204 (2002)