研究概要 |
X線侵入深さを大きい高エネルギー放射光X線を利用することで,遮熱コーティングのジルコニア・トップコートを透過して,ボンドコートの回折を十分に測定できることが実証できた.これを応用して,ボンドコートの内部応力と温度の関係を実際に試みた.遮熱コーティング試験片を1473Kまで加熱できる高温加熱装置を試作した.室温,773,1073および1373Kにて大気中で加熱してボンドコートの内部応力を測定した.その結果,室温では,500MPaを越える引張りが生じるが,加熱温度が1073Kを越えるとボンドコートの軟化により内部応力が緩和した.ゆえに,ボンドーとの内部応力は,室温から1073Kの熱ひずみによる応力が支配的なものと考えられる.また,ボンドコートの応力測定には,72keVの波長でNi3Alの311回折を使用するのが好適であることがわかった. 一方,高エネルギー放射光により深い領域の応力が測定できる.そのため,面外応力成分(応力1-応力3)を含めた測定が可能である.また,ラボX線(低エネルギーX線)においては,X線侵入深さがごく浅いので,面内応力のみを測定できる.高・低エネルギーX線を併用することで,トップコートのはく離応力が測定できるバイブリッド法を提案した.表面研磨除去しながらラボX線によりジルゴニア・トップコートの面内応力分布を測定した.72keVの高エネルギーX線により,トップコート膜厚を種々に調整した試料で面外応力分布を測定した.両者の分布からトップコートはく離応力の分布を求めることができた.その結果,トップ・ボンド界面に近づくに従いはく離応力が大きくなることが,明らかとなり,トップコートのはく離現象と一致した.
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