研究概要 |
高エネルギーおよびラボX線を利用したハイブリッド法を用いた研究の成果を基礎としながらより、この新しい手法を高温酸化による損傷の評価に研究を進めることができた. NiCoCrAlYボンドコートに大気プラズマ溶射したジルコニアトップコートの遮熱コーティング試験片を用意した.これらの試験片を1373Kの大気中にて500時間,1000時間,2000時間の酸化損傷を与えた. 各試験片の断面を金属顕微鏡および走査電子顕微鏡にて観察した.高温酸化により,トップコートとボンドコートの界面には,高温酸化層(TGO)が形成された.高温酸化層は,アルミナ酸化層と混合酸化層からなり,500時間を過ぎるとアルミナ酸化層の成長が停止するが,混合酸化層は2000時間に至るまで,単調に増加した.2000時間の試験片では,明瞭なはく離き裂の発生進展が見られ,2000時間の試験片のほとんどがはく離を起こした.一方,1000時間までの試験片では,はく離を生じることがなかった. 基材を電解研磨したとき,0時間の非酸化試験片はトップコートのはく離破壊を生じないが,500時間以上の試験片ではすべて電解研磨中にはく離破壊を発生した.TGOの成長がはく離の原因であることがわかった. 各試験片の深さ方向への面内応力分布をラボX線にて測定した.また,高輝度光科学研究センター放射光施設(SPring-8)において面外応力分布を高エネルギー放射光X線(72keV)により測定した.これらの測定結果を基にハイブリッド法により,はく離応力分布を解析した.はく離応力は表面付近では小さいが,ボンドコートとの界面付近で急激に大きくなった.この傾向と大きさは,500時間および1000時間では明確な差異はなかった.また,2000時間の試験片では,はく離のために研磨が困難で残留応力分布の測定ができなかった. 加えて効率よく残留応力分布測定の可能な高エネルギーX線ひずみスキャニング法の開発を行った.回折角が試料の表面効果により変化する原因を受光スリットの発散とゲージ体積の変化により解析して,解決を見た.
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