研究概要 |
本研究では薬物送達システム(Drug Delivery System : DDS)のカプセルを生体吸収性材料による機能的連続体と考えて形状を設計し,さらにはこれに予め残留応力を与えることで,分解速度や薬物放出時の挙動が調整できるものと考えた.その可能性評価のため,生体吸収性材料であるポリL乳酸(PLLA)を用いて二次元的な機能的連続体を作製し,これに残留応力が作用するような加工を施した上で,ギ酸を生体内の環境と見たてて分解実験を行い,残留応力が分解時の挙動に及ぼす影響について検討した.具体的には,二次元の機能的連続体として部分によって厚さの異なる不等厚リングをPLLAで作製し,その一部を切り取ってできる断面を改めて接合して不等厚リングの全域にわたり残留応力を発生させた.実験結果より,生体吸収性材料で不等厚の連続体を作製し,厚さ分布と残留応力の大きさを変えることで,破断に至るまでの分解時間制御が可能で,DDSへの応用における有効性が明らかとなった.さらには,はり理論を利用した理論的解析,および有限要素法を利用した数値的解析により,不等厚の連続体における初期形状から加工を施した後で発生する残留応力の大きさを求める計算を行い,その有効性を確認した.これらの解析方法を利用すれば,任意の大きさの残留応力を発生させる不等厚連続体の初期形状を決定することができ,生体吸収性材料の分解時間を考慮した連続体設計が可能となる. 一方で,本研究では,生体骨そのものを生体吸収性を有する機能的連続体とみなし,脊椎再建構造として用いられる金属製デバイスと移植骨の組み合わせにおいて,移植骨に作用する応力を解析し,移植骨の隣接椎体との癒合とその後の骨構造維持のために望ましい固定方法についても検計している.
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