研究概要 |
近年,近年の科学技術の進歩に伴って、車の性能,省エネルギ性などを向上するともに,車安全性も重視されている.乗員保護装置としてのエアバッグは,1967年にイートン社が開発して以来,2000年には先進国で発売される乗用車の97%に搭載されている.運転席SRSエアバッグの効果については,交通事故統合データを用いた分析がなされ,事故に関与した運転者に占める死亡あるいは重傷となった割合を,エアバッグを装備した車とエアバッグを装備しない車について比較すると,エアバッグを装備した車の方が低くなることが示された.最近,車の助手席のエアバッグだけでなく,サイドエアバッグ,側面のカーテンシールドエアバッグ,バイクとヘリコプタ用のエアバッグが開発され,大型旅客機にエアバッグの搭載も検討されている.しかし,車が衝突する場合,SRSエアバッグの展開衝撃によって頭・頸部,胸部,上肢などが傷害を受けるとの研究結果も報告されている.日本の車メーカーとエアバッグ材料メーカでは人間にやさしいエアバッグや負傷しやすい女性用のエアバッグなどの開発を模索しているが,基礎研究の不足で,参考にできる資料はまた少ない. エアバッグが展開している際,織物の面に衝撃荷重が作用する上,織物と顔の皮膚の相対運動があり,大きな摩擦力によってかすり傷が生じる.これは衝撃時の織物の摩擦特性によるものと考えている.本研究では衝撃による織物の摩擦特性を検討するために,その特性を測定できる装置を提案し,試作した.いくつかの織物を測定し,その特性を検討した.基礎研究としてエアバッグが展開する際の爆薬の高熱空気漏れについて衝撃波管と反射波理論を利用して,高速気体におけるエアバッグ材の空気漏れを測定し,静的な通気性実験の結果と比較した結果,高分子材料の粘弾性の効果により高速気体におけるエアバッグ材の通気性は静的な通気性より小さいことがわかり,NOコーティングエアバッグの使用が可能であることを証明した.また,エアバッグの展開による人間に対する衝撃力に注目して,高速展開する際の展開速度,高圧気体の圧力とその変化,エアバッグの材料一織物の材料力学特性などより,人間への衝撃力への影響を実験的により解明した.これより人間にやさしいエアバッグの開発に寄与したい.
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