研究概要 |
超音波断続負荷型疲労試験機の設計・製作が完了したので,従前からのものと併せて2台の試験機を用いて基礎データの取得を開始した.超音波疲労は通常の試験機の約1000分の1という短時間で疲労特性が得られる利点を活かしながら,先ずは一般的な試験機で得られるS-N曲線との対応を検討する目的で,焼入れ後,高温焼戻ししたS35CおよびSNCM439につき10^9(ギガ)サイクル迄のP-S-N線図を求めた.各材料につき10種類の応力で1応力当たり15本,計150本の試験片を用いて得られた結果は,日本材料学会あるいは金属材料技術研究所から出版されている10^7サイクル迄の疲労強度データ集の結果と極めて良い一致を示し,超音波断続負荷法は加速試験法として有用であることが確認された. 以上の結果を踏まえ,10^7サイクル以上のデータを含むS-N曲線では耐久限の消滅が予想される高強度鋼の一例としてマルエージング鋼についての10^9サイクルまでの疲労強度を求めた.予想通り10^7サイクル迄のものは表面を起点とする破壊であったが,それ以上の繰返し数のものは介在物を起点とする内部破壊に移行すること,材料製造行程の改善により介在物の寸法を微細化すると10^7サイクル以上の長寿命城における疲労強度の改善が得られることなど,通常の試験機を用いた場合には数年掛かって得られる結果が短期間に求まり,材料開発に応用すると極めて有効な手法になる事が確認された.また,機械的に応力を加える一般的な試験法に比べ,超音波疲労で得られる破面には破面同士の叩き合いが生じないため,フラクトグラフィによる破壊原因の追求には適した破面が提供されるという副次的な利点のあることも明らかとなった.浸炭処理したSCM430鋼についてのデータの取得を開始したが,同様に有用な結果を得つつある.
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