初年度(平成13年度)は、申請者らがめざす形状記憶合金を用いたシンプルで複雑な3次元的動きが可能なアクチュエータの開発にあたり、形状記憶合金の持つアクチュエータ機能(二方向形状記憶効果)の基本的性質および可能性を詳しく調べた。 1.二方向形状記憶挙動の3次元的運動を計測するための計測システムを開発した。すなわち、形状記憶合金に余分な外力を与えないためにロゼット型ひずみゲージを用いた計測システムを構築した。また、トレーニングされた試験片に適切な温度サイクルを与えるため、低温用温度槽を用いた温度制御装置を作成し、これに前述の計測システムを組み込こんだ。 2.申請者らがこれまでに用いてきた実績のある銅系形状記憶合金を薄肉円筒形状に加工した試験片に、軸力・ねじり組合せ負荷試験装置(オートグラフ/島津製作所)を用いて、まず引張および単純ねじりによる単純負荷トレーニングを与え、トレーニング強度と二方向形状記憶挙動の間の基礎的な関係を調べた。同時に、トレーニングによる微視的構造変化、すなわち内部残留応力の発生メカニズムを考察した。 3.単純負荷トレーニングの結果を基礎として、次に用系形状記憶合金製の薄肉円筒に軸力とねじりの組合せ負荷を用いた種々のトレーニングを与え、複合負荷トレーニングが与える二方向形状記憶挙動への影響を詳しく調べた。 この成果を踏まえ、本年度(平成14年度)では、得られた実験結果を詳しく分析し、二方向形状記憶効果の基礎メカニズムの解明、応用の可能性を論じ、いくつかの追加実験を行った。また、他の材料、特に優れた特性をもつTi-Ni系形状記値合金を用いた同様の実験を行い、二方向形状記憶効果の本質的メカニズムを解明に務めた。 ここで得られた多くの研究成果については、国内外の学会誌また学術講演会などを通じ広く公表してきた。
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