研究概要 |
Si基板上のAl薄膜の内部に気孔を導入するモデル化を行い,薄膜内に存在する気孔と構造的および機械的特性の関係を,原子間ポテンシャルとして修正原子埋込み法(MEAM)ポテンシャルを用いた分子動力学法解析により,以下の諸点を明らかにした.まず,Al単結晶およびアモルファスの各構造における充填率に関しては負荷応力による変化は認められず,硬度は充填率の高い構造において,また圧縮応力場において高くなることがわかった.次に,薄膜内部に一様に気孔を分布させたモデルを用いることにより,構造変化に起因して,原子空孔率の増加により残留応力は引張側に移行し,薄膜の充填率も原子空孔率の増加に伴って低下することがわかった.また,原子空孔の大きさによる影響としては,原子空孔が大きくなると,気孔が多い場合には引張応力が発生したが,気孔が少ない場合には引張応力が緩和された.さらに,薄膜の充填率を増加させると硬度は増大するが,表面の気孔が大きい場合にはその影響は無視できなくなった.薄膜の水平方向への引張強度に関しては薄膜の内部および表面の気孔が破壊起点となるため,充填率の増加によって強度特性は向上した.一方,鉛直方向の引張強度に関しては充填率による相違はほとんど認められなかった.これは,本解析で対象とした範囲においては,薄膜の強度が基板-薄膜界面の強度によりも大きいため,破壊が主に界面特性に支配されたことによる.気孔の膜厚方向分布による影響としては,界面および表面近傍において構造変化の拘束が緩和しやすいため,充填率は気孔が薄膜の中心部に偏在するときに最小となった.気孔の分布と硬度の関係においては,気孔が小さいとき表面近傍の気孔が主に硬度特性に寄与し,また硬度特性は薄膜の充填率によりよく整理できることが判明した.
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