研究概要 |
本研究では,Nb-TiおよびNb3Snが安定化銅に埋め込まれた超伝導複合線材について,フィラメントの体積含有率の異なる試料を用意し,静的および繰返し荷重下での超伝導フィラメント,母材(安定化銅)の変形挙動と残留応力変化に起因する微視的な構成要素のひずみを解析し,超伝導特性との相関を明らかにするとともに,微視的なフィラメントの損傷を把握し上記相関の機構を解明する.さらに,フィラメントの含有率と微細組織が力学応答に及ぼす影響を体系化し,優れた超伝導特性を有しかつ応力負荷に対して影響を受けにくい超伝導複合線材を実現するための条件の提案を目的とする.本年度の成果は次のように要約される. 1)走査電子顕微鏡での組織観察に画像処理ソフトを組み合わせ,フィラメントの直径分布,Nb3Snの析出形成量等の構成要素分布を測定した.Nb3Snの析出形成量は断面内で均一でなく,周辺ほど高いことが明らかとなった. 2)両線材について,複合線材とともに硝酸で周辺の安定化銅のみを溶かした線材,溶解し抽出した微細フィラメント単体について,常温で引張り試験を行った.特にNb3Snについては,フィラメントの束にエポキシ樹脂を含浸した試験片も作製し,フィラメントの平均的な力学特性をより高精度で求めた結果,弾性率は従来報告されている値より低いことが明らかとなった. 3)両者の線材について,ひずみ負荷を中断し,硝酸で母材を溶解することにより,ひずみに対するフィラメントの変形(Nb-Ti)や損傷の空間分布(Nb3Sn)を求めた.Nb-Tiについては含有率が低い場合,マルティプルネッキングが著しいことが明らかとなった.
|