研究概要 |
本研究では,Nb-TiおよびNb_3Snが安定化銅に埋め込まれた超伝導複合線材について,静的および繰返し荷重下での超伝導フィラメント,母材(安定化銅)の変形挙動と残留応力変化に起因する微視的な構成要素のひずみを解析し,超伝導特性との相関を明らかにする.また,微視的なフィラメントの損傷を把握し上記相関の機構を解明するとともに,フィラメントおよびマトリックスの力学特性と微細組織,体積含有率が複合線材の力学応答に及ぼす影響を体系化することを目的とする.最終年度の成果は次のように要約される. 1)Nb-Ti/CuではNb-Tiフィラメントが荷重および超伝導状態での電流を負担する.疲労荷重を与えると,周囲の安定化銅から発生した疲労き裂がフィラメントを破断して進展するが,そのときの残留強度と臨界電流はいずれも残留フィラメント数に単純に比例することを明らかにした. 2)Nb-Ti/Cuで電気鍍金によりフィラメント体積含有率を0.08に低下させた試験片を対象として500℃までの熱処理を行い,Nb-TiおよびCuの力学特性の変化が変形挙動,特にマルティブルネッキング発生に及ぼす影響を検討した.熱処理の影響は特にCuで大きく,処理温度を上げると柔らかくなるとともに大きな加工硬化を示した.さらに,熱処理温度が500℃の場合に複合線材でマルティプルネッキングが発生することを実験的に示すとともに,数値解析によってその妥当性を証明した. 3)Nb_3Sn/Cuでは,線材から安定化銅を30,60および100%除去した試験片の応力-ひずみ関係を詳細に比較検討することにより,集合組織を持うCuおよびCu-Snの異方性弾性率を正確に決定するとともに,加工硬化を含めた銅の応力-ひずみ関係を求めた.さらに,安定化銅の外側と内側で残留ひずみが異なることを明らかにするとともに,その値を求めた. 4)3年間の成果を総合することにより,Nb-Ti/CuおよびNb_3Sn/Cu超伝導複合線材に関し,優れた超伝導特性を有しかつ応力負荷に対して影響を受けにくい超伝導複合線材を実現するための条件を提案することができた.
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