研究概要 |
893Kおよび常温においてアルミナおよびジルコニア溶射を施したSUS304につき疲労試験を行った.コーティングによる高温疲労強度向上の要因として基材界面のはく離強度に注目し,ボンドコート層の拡散熱処理が疲労破断強度に与える影響について検討した.特に疲労試験中の表面ひずみをレーザスペックル法で連続計測し,表面ひずみとはく離損傷との対応関係を明らかにし,各溶射材のはく離損傷過程の比較を行い,はく離強度が破断寿命におよぼす影響について検討した.縦断面や破面の観察結果とあわせ以下のことが明らかとなった.(1)ボンドコート大気溶射材ではボンドコート層に疲労き裂が発生しやすいため,基材界面がはく離しやすいアルミナ被覆材の方がジルコニア被覆材より長破断寿命であった.(2)皮膜のき裂が基材にそのまま進展し比較的短破断寿命となった上記のアルミナ被覆材の場合でも基材単独材より長破断寿命となった.これは大気溶射により作製した皮膜のヤング率が低いためであり,大気溶射の場合被覆することによって破断寿命が大きく低下することは無いことが分かった.(3)ボンドコート減圧溶射材ではボンドコート層に疲労き裂が発生しにくいため,基材界面がはく離しにくい拡散処理済材の方が長破断寿命であった.(4)大気溶射材より減圧溶射材の方が長破断寿命であったので,寿命を向上させるには強固なボンドコート層を密着強度よく基材に被覆することが有効であることが分かった.
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