高強度Al合金6061-T6と7075-T6を用いて室温・大気中で超音波疲労試験を行い、回転曲げ疲労試験の結果と比較することにより10^9回までの超長寿命域における疲労強度特性を調べた。 1.いずれの材料においても、超音波疲労強度は回転曲げ疲労強度より高い。そして、超長寿命域における疲労強度に及ぼす超音波の影響は、7075-T6材より6061-T6材のほうが顕著である。このことは、疲労強度に及ぼす超音波の影響を検討する際、材料の特性を考える必要があることを意味する。 2.表面連続観察の結果、いずれの材料においても、き裂はすべりを起点に表面から発生しており、き裂発生機構に及ぼす超音波の影響は認められないが、超音波疲労は回転曲げ疲労に比べ、微小き裂の発生および伝ぱが遅い。また、超音波疲労の場合、き裂は応力軸にほぼ垂直な引張形で伝ぱした後応力軸と約60度のせん断方向に変化し、疲労寿命の大半は100ミクロン程度の微小き裂の伝ぱ寿命で占められる。 3.破断した試験片を走査型電子顕微鏡によって破面解析した。表面観察の結果と同様、疲労き裂の発生機構および初期伝ぱ機構に及ぼす超音波の影響はあまり顕著ではないが、回転曲げではストライエーションが観察されるのに対し、超音波疲労ではストライエーションがほとんど観察されず、むしろ、すべり破面さらにすべり方向に並んだ多くのボイドが混在している。すなわち、超音波疲労の場合、き裂の伝ぱにつれ、破壊モードが開口形よりせん断形に遷移する。 また、超音波疲労における材料特異性を検討するため、Ni基超合金やマルエージング鋼など高強度合金についても室温・大気中での超音波疲労試験を行っており、研究を進めている。
|