研究概要 |
短繊維強化複合材より切り出した試料の表面下に存在する繊維が試料表面から観察可能と仮定して,表面で切られる繊維の完全投影長さおよび不完全投影長さの分布を理論的に誘導した.繊維の多くはそれよりも手前にある何本かの繊維が重なって,部分的にしか観察可能でない.他の繊維が重なる部分の位置と幅の分布を確率論に基づいて求めた.式は,漸化式の形となった.誘導した理論式を用いるとともに,昨年度の実績で報告した繊維と複合材の相対位置関係を考慮して,短繊維強化複合材中の繊維長さの変化による完全投影長さおよび不完全投影長さの変化を求め,本理論による繊維長さ分布評価の可能性について検討した.さらに,完全投影長さおよび不完全投影長さに与える様々な因子の影響について検討した.得られた知見は以下のとおりである. (1)他の繊維が重なる部分の位置や幅の分布を確率論に基づいて求め,完全投影長さ分布および不完全投影長さ分布を求めるための理論式を誘導した. (2)完全投影長さや不完全投影長さを用いて繊維長さを推定する場合,推定できる繊維の長さに上限が存在することが指摘された. (3)繊維方向分布が3次元ランダムであるならば,計算を行ったほとんどの範囲で,繊維長さ,繊維体積含有率および試料厚さが変化しても,繊維の投影長さと不完全投影長さは近い値をとることがわかった. (4)試料表面に平行に近い繊維がより多くなると,繊維の投影長さと不完全投影長さの値の差が広がることがわかった.
|