研究概要 |
本研究の目的は,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)の耐クリープ特性に及ぼす繊維充填の効果および結晶化の影響を解明することを目的とする。一方向性ラミナを擬似等方性に配列した積層材料([(0/90/45/-45)_2]s、[(90/0/-45/45)_2]s ; W_f=60%)と短繊維をランダムに充填し射出成形したFRTP (W_f=20%)を準備し、積層構成、繊維の形状と量および結晶化度が粘弾性特性に及ぼす影響を明らかにする。 DSCを使用した熱分析の結果より、結晶化の進行を定性的に求めるとともに、顕微鏡観察し、任意の結晶化度の調整方法を確立し、積層材については24%と42%および射出成型CFRTPは33%、38%および42%の材料を準備することを可能とした。そして温度域80℃から150℃で曲げクリープ試験し、クリープ変形に及ぼす充填量と結晶化度の影響を調べた。 求めた温度別クリープコンプライアンス曲線群を比較することで、混入率の増加とともにまた結晶化度の上昇とともにクリープの発生が抑えられることが確認した。さらに、これらより材料毎にマスター曲線を作成するとともにシフトファクターの温度依存性を調べ、アレニウス型の温度時間換算則が成立することを明らかにした。また繊維混入率の増加でマスター曲線は比例して低下し、かつ物理時間軸上を長時間側に移動することを確認した。すなわち繊維の充填は粘弾性の発現も抑制することを明らかにした。同様に、結晶化度を積層材では25%から42%と、短繊維強化FRPでは、33%から42%へと増加させることにより粘弾性の進行を抑制し、その程度は100分の1程度に低下した。別の表現で言えば、同じクリープ量に達するまでに100倍の時間を要するように改善できたことを確認した。 PEEKの結晶化プロセスを購入した顕微鏡用冷却・高温装置を使用して観察した結果、成型時に全面的に球晶に生成し、この後の加熱により微細な結晶が発生することを見出した。
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