研究概要 |
近年,大気汚染の問題からLEV(Low Emission Vehicle)が各種開発されている.これらの中でZEV(Zero Emission Vehicle)を目標とする燃料電池自動車が注目されており、燃料の圧縮水素ガスを貯蔵する高圧水素容器の検討がなされている。車載する水素貯蔵容器の特性として走行距離の問題から軽量,高耐圧容器が望まれている。 本研究では軽量化に優れた既存の炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)製の圧力容器に圧縮応力を付与した形状記憶合金(Shape Memory Alloy, SMA)を巻きつけ、タガ締め効果による耐圧強度の一層の向上を図ったが、その評価を実験及び有限要素法の解析を用いて行った。研究対象として考えた圧力容器は、6061アルミライナー、CFRP層とGFRP層で構成されている酸素呼吸用の圧力容器(容量2リットル)で、口金部、ドーム部と円筒部の構造からなる。耐圧及び破壊実験と有限要素法の解析との比較・検討結果から次の事柄が明らかになった。 (i)(1)圧力容器だけの場合、(2)SMAワイヤーをただ巻いただけの圧力容器(変態温度以下)、(3)SMAワイヤーを巻いて記憶させた圧縮応力を作用させた場合の圧力容器(変態温度以上)について、それぞれに内圧15MPaまで与え、ひずみを比較した結果SMAによるタガ締め効果が確認でき、実験結果は有限要素法の結果と良い一致を見た。 (ii)素線径0.5mmと素線径1.0mmのSMAワイヤーを巻いた圧力容器(変態温度以上)の耐圧実験の結果を比較すると、胴部中央の4chでは素線径1.0mmのSMAを巻いた方がひずみをより抑える事が確認でき、形状記憶合金によるタガ締め効果は素線径が大きい方がより期待できることを明らかにした。 (iii)素線径1.0mmのSMAワイヤーを巻いた圧力容器(変態温度以上)は圧力容器単体の破壊圧力と比較すると耐圧強度は25.5%向上し、SMAによるタガ締め効果を明確に示した。 本研究の成果は日本材料学会の第32回FRPシンポジウムで公表され、日本機械学会2003年度年次大会で公表予定であり、近日中に論文として日本材料学会もしくは日本機械学会に投稿する。
|